【夏目漱石特集！】「吾輩は猫である」とその背景

明治時代の文豪で一番有名と言っても過言ではないのは、夏目漱石だと思います。

以前は千円札に肖像画が使用されていたので見たことがある人も多いかもしれません。
また、中学校や高校の国語の教科書に「坊ちゃん」や「こころ」など作品が採用されて読んだことがある人も多いでしょう。

そんな夏目漱石の小説処女作が「吾輩は猫である」です。
夏目漱石と親友とも呼べる高浜虚子が、漱石が描いた小説を高く評価し、虚子が主催していた「ホトトギス」に掲載したのが世に出るきっかけとなりました。
初めは短編小説だったのが、「面白いから続きを書いてみれば」と言われて、今の「吾輩は猫である」になったと言われています。
発表当時のタイトルは、そのまま「猫伝」でした。
その「猫伝」というタイトルも虚子に冒頭の「吾輩は猫である」が良いと言われて、そのままタイトルにしたという噂です。

今回はそんな夏目漱石の「吾輩は猫である」について掘り下げてご紹介していきます。

文部科学省　学習指導要領「生きる力」
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/index.htm

吾輩は猫である」のあらすじと背景

そんな「吾輩は猫である」の作品の名前は知っていても、内容までは知らないという人が中高生の学生ではほとんどだと思います。
「吾輩は猫である。名前はまだない。」という有名な書き出しを知っている人はいるかもしれませんが、これもまた内容までは知らない人が大半かと思います。

「吾輩は猫である」は、捨て猫ある「吾輩」が主人公です。
その猫が見た人間と人間世界が皮肉たっぷり込めて書かれているのが一番の特徴です。

大まかなあらすじは、捨て猫だった「吾輩」が、ある日中学校の英語教師をしている「苦沙弥」に拾われて、その家に棲みつくところから始まります。その家に住む主人とその家族、出入りしている主人の弟子たちの言動を猫の視点で書いています。
モデルは実際に漱石の家に出入りしていた弟子たちで、そのほとんどが後に様々な分野で活躍していく人たちです。
主人のモデルはもちろん作者の夏目漱石で、漱石が自分の家に出入りしている弟子たちとの何気ない会話などを面白おかしく皮肉を込めて書いています。

夏目漱石は、大学を卒業してから愛媛県の松山中学校で英語の教師をしたいたことがあります。
そこでの教師の経験をもとにして書かれたのが「吾輩は猫である」の後に書かれた「坊ちゃん」です。

作品中のエピソードも弟子に騙されたり、近所のメス猫の死を知って悲しんだり、正月の来客が面倒で嫌になっている主人の姿だったり、人間としての気持ちや猫の気持ちが入り混じっているのが面白いです。
漱石自身が感じていた世の中に対する日常の風習などを皮肉っぽく書いています。

その中でも度々、主人と弟子たちがビールや日本酒を飲みながら議論したり、酔いつぶれたりしている姿が出て来ます。そんな人間の姿を見た主人公の「吾輩」が、胃病で苦しんでいる主人を見て将来に悲観してどうにでもなれと勢いで主人たちが飲み残したビールを飲みます。
猫がビールを飲むという発想も漱石らしいですよね。

ビールを飲んだ吾輩は、酔っぱらってぐるぐる目を回してしまいます。気持ち悪くなるし、喉が渇くし、水が飲みたいということで水甕に入った水を飲もうとしてその中に落ちてしまいます。這い上がろうとしても這い上がれず、もがいても水を飲むばかりで、仕方がないからもう諦めようと最後は「南無阿弥陀仏、ありがたい」と言って死んでしまいます。

夏目漱石と「吾輩は猫である」

この作品の面白いところは、その背景に漱石自身の実際に生活が反映されている所です。

当時の漱石の家には、いろいろな弟子と呼ばれる人たちが出入りしていました。
「漱石山房」と呼ばれて、後に文学者だけでなく哲学者や芸術家として活躍していく人々が多く、代表的な人物としては、寺田寅彦や芥川龍之介、和辻哲郎などがいます。

芥川龍之介は24歳の時に発表した「鼻」が夏目漱石に称賛されて交流を持つようになり、弟子のように漱石を慕っていたそうです。
寺田寅彦は哲学者として有名で数多くの論文を残しています。

夏目漱石はいっけんすると人間嫌いに思われがちですが、寄って来る人たちには寛容だったのだと思われます。
漱石が人間嫌いと思われるきっかけは、ロンドン留学時代の精神疾患で強制帰国させられたエピソードが原因でしょう。

ロンドンで英文学を勉強すればするほど、それまで漱石自身が考えていたことが信じられなくなったと同時に、慣れない外国での生活が今でいう鬱のような状態になってしまったのです。
ロンドンにいた漱石のもとを訪れた人から、「漱石が精神的にヤバい」と報告を受けた当時のお偉いさんが漱石を強制的に帰国させました。帰国後の漱石は、今の東大で英文学を教えることになりますが、その前任者が小泉八雲で、小泉八雲の授業と漱石の授業を学生たちに比べられて人気がなかったという話も残っています。

そんな人に教えることの難しさを感じていた時期に高浜虚子に勧められて書いたのが、「吾輩は猫である」だったのです。

まとめ

「吾輩は猫である」の発表以降は、教師を辞めて新聞社の専属作家となり小説家として多くの作品を残して行くことになります。

「吾輩は猫である」は、夏目漱石の処女作であり、漱石自身の考え方が素直に作品に反映されている唯一の小説でもあると言えるのは皆も周知の事実で、来世でも今世にのように多くの人々に愛されるだろうということは言うまでもないのです。

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